琉球大学医学部 システム生理学講座|当教室は排尿生理に着目して、世界的な研究に取り組んでいます。

国立大学法人琉球大学医学部 システム生理学講座

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基礎研究

基礎研究

研究概要:宮里 実

排尿は、動物のマーキング、縄張り行動にみられるように、高次脳機能といった役割があります。一方で、生命の営みに必要不可欠な生命現象としての役割があります。加齢、生活習慣病、脳梗塞、パーキンソン病といった内科疾患、腹圧性尿失禁、骨盤臓器脱といった女性特有の疾患など、様々な原因で障害されます。基礎的手法、臨床で培ってきた知識と経験を生かして、橋渡し研究を追究しています。
宮里ラボの卒業生が、当基礎研究を共同研究者として支えています。

大城琢磨(那覇市立病院 泌尿器科、平成27年3月 大学院修了)
木村隆(琉球大学腎泌尿器外科、平成30年3月 大学院修了)
芦刈明日香(琉球大学腎泌尿器外科、平成31年3月 大学院修了)


排尿の中枢神経機構の解明

排尿には末梢神経だけではなく、仙髄、橋排尿中枢、大脳が関与するため、成熟という過程を経て構築されます。一日の大半は蓄尿であるため、中枢神経機構が制御の役割を果たします。このように、膀胱は、オン(排尿期)とオフ(蓄尿期)が存在する唯一の自律神経支配臓器です。私はこれまで、排尿の中枢神経機構の中で特に抑制系ニューロン(グリシン、GABA)の働きに着目して基礎研究を行ってきました。2004年~2006年米国のピッツバーグ大学泌尿器科に留学し、日本での研究をさらに発展させ、脊髄損傷ラットにヘルペスウイルスをvectorとしてGABAの産生酵素を遺伝子導入し、世界に先駆けて遠心路には影響せず、膀胱知覚(頻尿や膀胱痛)のみを改善させることを報告しました。難治性骨盤痛を標的とした新たな治療方法の開発を行っています。

排尿の中枢神経機構の解明

(Miyazato M et al. New Frontiers of Basic Science Research in Neurogenic Lower Urinary Tract Dysfunction. Urol Clin North Am. 2017 44(3):491-505.より抜粋)

膀胱機能の自然史に着目した加齢に伴う排尿障害機序の解明

膀胱も心臓のように生涯働く臓器であり、自然史が存在します。頻尿や尿意切迫を伴う過活動膀胱と残尿や尿閉に至る低活動膀胱は相反現象ではなく、過活動膀胱という代償機転がやがて不可逆的低活動膀胱に至る過程に着目しています。老齢ラットを用いて、加齢にともなう膀胱平滑筋細胞間結合蛋白(コネキシン43)の低下、膀胱虚血と線維化、一酸化窒素の分泌低下に伴う尿道弛緩反応の減弱を報告しました。加齢にともなう自律神経変化と排尿障害機序の解明を行っています。


腹圧性尿失禁の発生機序と創薬の開発

腹圧性尿失禁の原因はこれまで解剖学的構築の破綻が原因とされてきましたが、これまでの私たちの基礎研究で脳幹を中心とする尿禁制反射の障害が主因であることが明らかとなりました。脳幹青斑核、縫線核からの下行経路に、尿禁制反射に関与するノルアドレナリン、セロトニン受容体が多く存在することを報告してきました。セロトニン2C受容体を標的とした創薬開発が私たちの研究をもとに始まっています。もう一つ別の経路として、オピオイド受容体の中でμ受容体が尿禁制反射を増強することを解明し、特許出願(特願2017-235701「脊髄オピオイドμ受容体を介した新規腹圧性尿失禁薬剤」)を行いました(宮里実、芦刈明日香)。腹圧性尿失禁の創薬の開発に取り組んでいます。

研究概要:細川 浩

光学的測定法による聴覚皮質活動の研究

音情報は、音空間から左右の耳に入り、末梢で音要素が分析され、脳幹で音の空間情報が解析され、聴空間地図が形成され、皮質に投射されます。皮質には、同じ特徴周波数を持つニューロンが周波数バンドを形成する一次聴覚領を含め8以上の領域があります。この聴覚皮質でどのように音情報が処理されているかを時空間的に解析することは、非常に興味深いことです。70数種の鳴き声でコミュニケーションしているモルモットを実験動物として使用し、その聴覚皮質を電位感受性色素で染色し神経活動を可視化する光学的計測法で研究を進めています。聴覚皮質の両耳情報処理機構の研究、一次聴覚皮質の周波数バンド内音情報処理機構の研究、音情報処理における左右聴覚皮質の優位性に関する研究、種固有音の聴覚皮質応答処理の研究などのサブテーマで研究を行っています。

光学的測定法による聴覚皮質活動の研究

研究概要:上條 中庸

記憶は生命が生きていく上で欠かせないものです。海馬は記憶形成(覚えること)や想起(思い出すこと)に大きく関わっています。海馬の入り口に当たる歯状回では、外界からの空間情報や匂いなどの非空間情報の入力と脳内からの入力が統合されます。その情報統合が正常にできないと癲癇や鬱などが引き起こされることが知られています。そこで、電気生理学的手法を用いて海馬の特性を調べることによって記憶形成や疾患発生機序の神経基盤について解明する研究をしています。そして、排尿と脳の関係について調べるために基礎研究と臨床研究との共同研究に取り組みます。


海馬における異なる情報統合機序の解明

海馬は記憶が形成される部位として知られています。歯状回は様々な情報が初めに海馬への入力される入口です。五感で得られるような外界の情報や思考や集中の様な自発的な脳内の情報がどのように統合され記憶が形成されるのかは解明されていません。私はこれまでに、歯状回の一つの神経細胞(入力を受ける樹状突起)で情報統合(入力情報が普通よりも大きくなる)ことや、神経細胞網(ネットワーク)にて外界からの異なる感覚情報が歯状回の入力する場所によって統合されやすくなることを報告してきました。今後、脳内からの情報がどの様に統合されるのかについて研究し、記憶形成の機序の解明を目指します。

海馬における異なる情報統合機序の解明
海馬における異なる情報統合機序の解明

海馬神経可塑性変化と下部尿路機能障害発生機序解明

ヒトは、成熟と学習により大脳に統合された自立した排尿機制御を獲得します。ネグレクトや虐待等の幼少期ストレスは、大脳機能に構造的変化を与え、排尿機能障害をもたらすことが知られています。例えば、心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、夜尿・尿失禁等の排泄障害を誘発し社会適応に深刻な問題を引き起こしますが、有効な治療がありません。近年、非侵襲的な対応策として神経可塑性を利用した治療方法が着目されています。そこで、幼若期のストレスが、海馬の短期可塑性等障害をもたらし、さらに、ホルモン異常を引き起す結果、下部尿路機能障害を誘発する仮説を構築しました。ストレスによる海馬、下部尿路機能障害の新たな疾患発症機序の解明を目指し、ホルモンバランスフィードバックと神経可塑性を利用した下部尿路機能障害治療・ストレス対策の確立を追求します。

海馬神経可塑性変化と下部尿路機能障害発生機序解明
海馬神経可塑性変化と下部尿路機能障害発生機序解明

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