加齢、糖尿病、脳梗塞、パーキンソン病、腹圧性尿失禁といった女性特有の疾患、間質性膀胱炎といった難治性疼痛疾患など様々な病態モデルを用いて排尿障害のメカニズムの解明、創薬の開発を行っています。
排尿は単なる生命現象ではなく、高次脳機能、生体内のホメオスターシスにも関与し、臨床的にも基礎的にも研究の重要性が増してきています。私たちは橋渡し研究を積極的に推進しています。
琉球大学大学院医学研究科システム生理学講座のホームページへようこそお越しくださいました。当ホームページをご覧いただき誠にありがとうございます。この度、当ホームページをリニューアル致しました。多くの医学部のホームページが研究者向けであるなか、当ホームページは一般の方、学生、企業の方を対象にしています。なぜなら、私たちが目指すゴールが、「研究」と「教育」の成果を広く社会に還元すること、何よりも皆さまによりよい生涯を送ってもらいたいからです。
生理学は、ノーベル医学生理学賞 というように、「人体の生命現象」を追究する学問です。システムとは、社会では組織のことですが、医学では臓器や神経のことを意味します。システム生理学は、医学の根幹を支えているところといえます。私は、26年間臨床医(泌尿器科医)として勤め、平成31年(令和元年)にシステム生理学講座(基礎講座)の教授に転身した経歴をもちます。臨床医として働く中で、「システムとしての排尿機能」に興味をもちました。「排尿」しない人間はいません。一般に、「自立した排尿」ができる期間が、健康寿命(ヒトらしく生きる)といわれます。また、臨床医として多くの癌や慢性疾患の患者さんと接するなかで、「痛み」がなく最期を迎えることがいかに幸せなことか学びました。残りの医師人生を、「痛み」と「排尿」の研究に捧げる決意をしました。母校の学生には、生理学を通して真理を伝えたいと思います。
当講座は、初代寺嶋眞一教授、二代目酒井哲郎教授の後を受け、平成31年(令和元年)に宮里が三代目として引き継ぎました。優秀なスタッフ、大学院生、そして「宮里ラボ」の卒業生が当講座の中核となり、すでにいくつものこれまでにない研究が立ちあがっています。臨床と基礎をつなぐ「橋渡し研究」、研究者と企業をつなぐ「産学連携」がこのホームページには詰まっています。研究は研究者のものではありません。私たちの研究に賛同頂ければ、皆さん自身も研究に参加することができます。研究を身近なものとして感じて頂ければ望外の喜びです。
このホームページが皆様のお役に立つことを心から願っています。
生理学は、基礎学・臨床学の垣根を越えて、機能の側面から「人体の生命現象」を研究する学問で、当講座は、一貫してその真理を追究してきました。
専門分野:電気生理学、感覚生理学。
研究課題:赤外線感覚系の生理学と神経組織学、脳内の化学伝達物質。
研究業績:マムシ類の温熱を感じとる仕組みという赤外線受容器の発動器電位を発見し、さらにこの受容器の組織学および鋤鼻系一次中枢における解剖学的・電気生理学を明らかにしました。
受賞:井上学術賞「マムシ類の赤外線受容器の生理学的研究」。
膜電位感受性色素を用いた「膜電位の光学測定法」という強力な実験技術を駆使して、心実験的心房細動“tachycardia-like excitation”における興奮伝播パターンの解析を行なった。また、膜電位の光学的測定法の感度・時間空間分解能を改良するため、新しい測定システムの開発を受光素子と光学系の両面から積極的に推進した。
令和6年4月1日現在
Ashikari A, Miyazato M, Kimura R, Oshiro T, Saito S. The effect of tramadol on sneeze-induced urethral continence reflex through μ-opioid receptors in the spinal cord in rats. Neurourol Urodyn 2018 37(5):1605-1611.
要約:オピオイド受容体の中でμ受容体が尿禁制反射を増強することを解明した。本論文の要旨は、第70回西日本泌尿器科学会総会(2018年) ヤングウロロジストリサーチコンテスト優秀賞を受賞した。
Kimura R, Miyazato M, Ashikari A, Oshiro T, Saito S. Age-associated urethral dysfunction in urethane-anesthetized rats. Neurourol Urodyn 2018 37(4):1313-1319.
要約:加齢に伴う一酸化窒素(NO)の低下が尿道弛緩反応の減弱の原因として示唆された。加齢に伴う残尿、尿閉といった膀胱機能障害の機序として初めて尿道に着目した本報告の意義は大きい。
Oshiro T, Miyazato M, Saito S. Relationship between connexin43-derived gap junction proteins in the bladder and age-related detrusor underactivity in rats. Life Sci. 2014 116:37-42.
要約:加齢に伴う排尿筋低活動の成因として、膀胱平滑筋細胞間結合蛋白コネキシン43の減少による情報伝達の低下が原因の一つであることが初めて証明された。本論文の要旨は、Second Prize Winner of the 2015 Annual Jack Lapides Essay Contestを受賞した。
Kamijo TC, Miyazato M. The influence of maternal separation on the development of voiding and behavior in rat pups. Continence. 2022 5:100570.
要約:ラットを用いて幼少期ストレス(母子分離)は成長後にでそれぞれ排尿行動と膀胱活動に影響を及ぼすことを示した。
Kamijo TC, Hayakawa H, Fukushima Y, Kubota Y, Isomura Y, Tsukada T, Aihara T. Input integration around the dendritic branches in hippocampal dentate granule cells. Cogn Neurodyn. 2014 8: 267-276.
要約:海馬歯状回顆粒細胞の樹状突起分岐部では、特定の入力が非線形的に統合されていることを発見し、そのメカニズムを解明した。1つの細胞の局所でも効率よく情報統合が成されていることを示した。
Takaoka EI, Kurobe M, Yoshimura N, Chermansky CJ, et al. Urethral dysfunction and therapeutic effects of a PDE 5 inhibitor (tadalafil) in a rat model of detrusor underactivity induced by pelvic nerve crush injury. Neurourol Urodyn 2020 39(3) : 916-925.
要約:PDE5阻害薬は骨盤神経損傷によるラット低活動膀胱モデルの尿道弛緩反応を促進させる事で残尿が減少させ、排尿効率を改善させる事を立証した。本論文の要旨は、全世界で公募される排尿機能研究の論文コンテスト「DIOKNO-LAPIDES ESSAY CONTEST」にて2位に入選した。
Kurobe M, Kawai K, Suetomi T, Nishiyama H, et al. High prevalence of hypogonadism determined by serum free testosterone level in Japanese testicular cancer survivors. Int J Urol 2018 25(5) : 457-462.
要約:精巣腫瘍治療後長期生存者におけるQOLや性腺機能低下について検討し、患者群では遊離テストステロン値が有意に低い事を本邦で初めて報告した。本論文の要旨は2016年度の日本性機能学会トラベルグラントを受賞した。
Kurobe M, Kojima T, Nishimura K, Nishiyama H, et al. Development of RNA-FISH Assay for Detection of Oncogenic FGFR3-TACC3 Fusion Genes in FFPE Samples. PLoS One 2016 11(12) : e0165109.
要約:FGFR3遺伝子変異やFGFR3-TACC3融合遺伝子は尿路上皮癌の発生に関与している。RNA-FISH法を応用してホルマリン固定パラフィン包埋組織(FFPE)から同融合遺伝子を検出する方法を初めて確立した。