当講座は、泌尿器科学、ゲノム医科学、産婦人科学、整形外科学、臨床疫学、統計学の専門家との共同研究により、多くの臨床研究、橋渡し研究を実践しています。
「久米島デジタルヘルスプロジェクト(KDHP:2017-2020年)」
食生活の欧米化、車社会の弊害として沖縄県は肥満、生活習慣病発症、平均寿命の凋落が大きな問題となっています。
高血圧、糖尿病、肥満といった生活習慣病と夜間頻尿は深く関連します。
久米島をフィールドとして、ITとヘルスケアを融合した健康増進のための社会実証事業「久米島デジタルヘルスプロジェクト(KDHP)」を行いました。
その中で、排尿パラメーターと身体的パラメーターの関係性の解析を行いました。従来の自己測定による排尿記録(アナログ)に代わり、サイマックス社(東京)が開発したトイレ後付型分析装置(下図)を使用しました。
解析の結果、夜間頻尿が、生活習慣病が未病の段階での超早期マーカーになり得る可能性が世界で初めて証明されました
(Int Urol Nephrol. 2021電子版)。
また、夜間おしっこでトイレに起きる(夜間頻尿≧1)、就寝後4時間以内にトイレに起きる(第一覚醒時間短縮)、
すぐにトイレにいきたくなる(膀胱容量減少)がそれぞれ肥満・生活習慣病の危険因子(オッズ比 7.65倍、5.17倍、2.27倍)であることが判明しました(Metabolites. 2022電子版)
(日本語要約)。
おしっこで健康チェックが可能となることを意味しています。
健康寿命を延伸させる新たなエビデンスの構築に資する大変意義のある成果です。
本研究の成果が夜間頻尿アプリ(Uナイト)の開発につながっています。
(READYFORクラウドファンディング生活習慣改善のきっかけになる、夜間頻尿を記録するアプリを開発したい)
骨盤臓器脱は、膀胱、子宮、直腸といった女性の骨盤内臓器が膣から脱出する疾患で、妊娠、出産という女性特有のライフイベントに起因します。女性の合計特殊出生率が日本一を誇る沖縄県においても潜在患者は多いことが予想されます。沖縄県中高年女性の骨盤臓器脱患者のゲノム解析及び患者の疾患情報を基に発症予測モデルを構築し、新たな予防戦略と先端治療の開発を目指します。
本研究は、令和2年度
日本医療研究開発機構(AMED)「女性の健康の包括的支援実用化研究事業―Wise」に採択されました(研究開発実施期間令和2年4月1日から令和5年3月31日)。
引き続き、令和12年3月31日まで継続します。
女性がより良い生涯を送るために必要な健康を提供できるような社会づくりを視野に入れ、人生の各段階に応じて心身の状況が大きく変化する女性のライフステージごとの健康や疾患について、病態の解明と予防、治療に向けた研究開発と実用化を推進する事業です。
NBDCとは?
NBDC(バイオサイエンスデータベースセンター)は生命科学データベースに関する日本の中核機関として、2011年に設立された公的組織です。
新たな知識の創出を促進するため、データの共有と統合に向けた研究開発とサービス提供っています。全世界の人々が閲覧することができます。
日本語版:
https://humandbs.dbcls.jp/hum0467-v1
英語版:
https://humandbs.dbcls.jp/en/hum0467-v1
琉球大学大学院医学研究科先進ゲノム検査医学講座の松波雅俊助教、今村美菜子准教授、前田士郎教授、システム生理学講座の宮里実教授、腎泌尿器外科学講座の芦刈明日香助教、 理化学研究所の寺尾知可史チームリーダー(静岡県立総合病院免疫研究部長、静岡県立大学薬学部特任教授)らの研究チームによる研究成果が、 Communications Biologyのオンライン版に掲載されました。
簡単なアンケート(所要時間15~30分)に答えて頂きます。
ただし、担当者が対象外と判断する場合がございます。
沖縄県女性の骨盤臓器脱疾患データベース解析による発症リスク要因の検証により、骨盤臓器脱の家族歴有、肥満(BMI ≧ 23.1kg/m2)、経腟分娩数 ≧ 3人が発症予測になることがアジア圏内で初めて明らかとなりました(Scientific Reports 電子版)。
排尿障害には、頻尿、尿意切迫、尿失禁といった蓄尿障害(ためる機能)と、残尿、尿閉といった排出障害(出す機能)があります。 特に、排出機能においては自分でトイレに行く、下着を下ろす、排尿姿勢をとるという排尿行動とバランスが重要な役割を果たすことが考えられます。 本研究においては、排尿障害を有する患者の座位姿勢の特徴とバランス能力を、客観的指標を用いて明らかにします。 その上で座位姿勢やバランス能力の改善が排尿障害の改善につながるか、将来的な検証に繋げていく予定です。
*令和5年12月までに琉球大学病院において20例の方にご協力頂き、誠にありがとうございました。
この研究の目的は、排尿に障害を持つ患者さんに、姿勢やバランスを評価し、排尿に障害のない人と比較することで、排尿に障害を持つ患者さんの座っている時の姿勢の特徴を調べることです。
琉球大学病院に入院中または外来通院中の患者のうち、尿排出障害のある患者10名(疾患群)と明らかな尿排出障害のない者10名(コントロール群)で日常生活動作の遂行能力や姿勢、バランス能力を比較しました。
難治性過活動膀胱といって、治療抵抗性(薬の効果が少ない)の頻尿・尿失禁の患者さんに漢方薬(半夏瀉心湯)の効果を検証する研究です。保険適応外の研究のため、特定臨床研究(厚生労働大臣の承認、臨床研究実施計画番号:jRCTs071200035)として、2020年10月から2024年9月まで、以下の4施設で行いました。
施行施設:琉球大学病院、ハートライフ病院、ちばなクリニック、那覇市立病院
42例と、多くの方にご協力頂き誠にありがとうございました。結果、半夏瀉心湯の追加投与は、難治性過活動膀胱への新たな治療選択肢になる可能性が示唆されました。
「ふくらはぎ」は第二の心臓とも言われています。最近、夜間頻尿の原因として、日中の下肢のむくみが注目されています。夜間就寝することにより心臓にむくんだ体液が移動し、夜間頻尿を引き起こすと考えられているためです。そのため、日中の下肢のむくみが改善できれば夜間頻尿の改善につながることが期待されています。本研究では、下肢のむくみをともなう夜間頻尿患者に薬物治療ではなく、日中弾性ストッキングを装着してもらい、夜間頻尿が改善するか検討するものです。弾性ストッキングは当方から無償でお渡しします。詳細は、泌尿器科外来または主治医にお尋ね下さい。
間質性膀胱炎は、頻尿(おしっこの回数が多い)、骨盤痛(下腹部の痛み)、不快感をともなう難病で、いまだはっきりとした原因は不明です。 間質性膀胱炎においては、うつや記憶力障害を引き起こすことが最近報告されています。ストレスが痛みや尿意切迫感(強い尿意)を増強するとされ、緊張の緩和が有効とされています。このことは、間質性膀胱炎が大脳の働きに 何らかの悪影響を及ぼし、逆に大脳の働きの改善が間質性膀胱炎の新たな治療視点になることを意味しています。そこで、間質性膀胱炎患者の大脳の働きを、核磁気共鳴画像法(MRI)を用いて健常者と比較する臨床研究を行います(令和3年5月承認)。
正常ボランティア被験者を募集しています。
撮影するMRIの費用は研究費で賄い、個人負担はありません(予約制)。
所要時間は30分~1時間。
協力頂いた方に、謝礼金1千円をお支払いします。
参加施設:昭和大学横浜市北部病院こどもセンター・琉球大学大学院医学研究科システム生理学講座(主実施機関)、沖縄県立南部医療センター、昭和大学藤が丘病院小児科(分担機関)
この研究は、こどもの頃に夜尿(おねしょ)、昼間尿失禁などの下部尿路症状で治療を受けたことのある方が、成人された後にどのような症状を認めているのかを調査するために実施するものです。
現在のアンケートの調査内容と以前こどもの頃の症状・治療内容を調査・解析することで、こどもの下部尿路症状の治療に役立てていきたいと考えています。(令和6年1月承認)
介護の中でも、排泄(排尿、排便)の問題は本人の自尊心に最も影響し、同時に介護者にも大きな負担となっています。しかし、在宅要介護者の排尿ケアに特化した保険制度はなく、適切な尿路管理を受けていないのが現状です。そこで、本研究において、在宅医療へ関わる医師や関係者が容易に排尿障害に取り組めるように、排尿障害対応マニュアルの作成及び検証を目的としています。どこでも自立した排尿管理を受ける権利(ウェルビーイング)を最終目標としています。(令和6年8月承認)